ここ数日更新が途絶えていましたが、久しぶりに読書に没入しておりました。
読んでいたのはアンソニー・ホロヴィッツの「カササギ殺人事件」「ヨルガオ殺人事件」「マーブル館殺人事件」。ボクは推理小説は好きな方で、というか小説で買うのは歴史モノか推理モノが多いのです。といって最近の作家さんのものを読む機会はほぼないんですけど。横溝正史はだいぶ揃ってます。
「カササギ」の方は何年か前に「ド嬢曰く。」で紹介されてたのをきっかけとして購入しました。ド嬢でも作中で絶賛されていたので。確かに面白く引き込まれていったんですが、どうも最後の展開が自分の性には合わなくて、面白いなあすごいなあ、で終わっていた作品でした。
それが最近になって海外ドラマをよく見る友人から「カササギ殺人事件てドラマが面白かった」と耳にしまして。ああ、ドラマ化したんだなと知りました。
アンソニー・ホロヴィッツがそもそも「名探偵ポワロ」などの脚本を努めていて、確かにこの人の脚本のポワロは好きだし面白かった。というかアガサの短編でさらっとしか書かれてないような筋書きを、よくまあ毎回45分〜90分の尺にしてたんだなあと別の感心もしてしまいました。アガサのポワロは読んでてもなんか淡泊過ぎて面白味が弱いんですよね。これはさんざんNHKで放送していたスーシェの「ポワロ」を見過ぎたせいでしょう。
ドラマは未見なんですが(見てみたい)改めて「カササギ」を読み直して、でもって続編が4冊も出てることを知り、あれよあれよと購入しては没入、読み終わったらまた次を買って没入…で、週末が過ぎていきました。
そもそも「カササギ」の終わり方が、例えるなら舞台となった屋敷が最後は火災で何もかも焼け落ちていく。その中に負傷し取り残されることになった主人公の運命や如何に!? という感じで、まあ助かるんですけど(を 何もかも失ってしまった…が恋人は傍に残り、平穏を得て静かに幕引きになる…という感じだったんで、「続編」が出てくるなんて思いもしなかった。というのが最初の印象です。
うん? 何もかも無くした状態からの「続編」て? それは別の物語なのでは…?
しかし「ヨルガオ」を読み始めると確かに続編でした。あの因縁深い性悪作家アラン・コンティに名探偵アティカス・ピュントが墓から這い出て主人公に取り付くかのよう。確かに作家は死にました。しかし過去の「作品」は遺る訳で、この先もう新作は出来上がらなくとも過去作には実は秘密があって…という導入にはうならされます。やはりホロヴィッツは面白い。こんな形で紛うことなき続編を作り上げるとはなあ、と一気に読み終えました。
で、そのままさらに第三弾たる「マーブル館」も読み入った次第です。
細々と感想を書くとネタバレになってしまいますからそこはあまり触れないようにしたいと思うんですが、ボク個人としては主人公の謎解きフェーズよりも「アテュカス・ピュント」という架空作品の主人公の方が好みです。全9作(「マーブル館」で何故か増えて10作になった!)の「アテュカス・ピュント」シリーズを全てこの世に書き出して読んでみたい。時代も雰囲気もドラマのポワロ張りで、ポワロ好きにはたまらない感じがします。キャラクターはポワロの方が面白そうですがどこまでも温和で冷静、物腰柔らかい性格なのに随所で切れ味鋭い頭脳を発揮するピュントは、今となっては「よくある名探偵か」になってしまうかもですがやはりミステリーは名探偵が居て欲しいんですよね。
「カササギ」「ヨルガオ」「マーブル館」と、ピュントのフェーズは楽しめるんですが…個人的には女性主人公(アテュカス・ピュントシリーズの編集担当)の立ち回りするフェーズがあまり好きになれない。いろいろ調べ回るのはいいんですが、迂闊さなのか何なのか、読み進めているうちにいつのまにか深刻な危機に身をさらしてしまっているのがなんとも。「おいおいなんだそれ('A`;)」て感じになります。そこは怪しいと思わないの? いや思ってたんならもう少し工夫や備えをして臨むんじゃないの? みたいにハラハラというかイライラというか… 主人公は名探偵じゃありませんからね。まあ仕方が無い、というか、日常の延長の所作が突然修羅場になる、というあたりこそが「サスペンス」でしょ、ということなのかもしれません。
知能も行動もある意味で自分(読み手)と等身大の主人公じゃん、と言われれば、「はい、ソウデスネ(´・ω・`)」ではあるんですが。
…そんなおばさんのドタバタ話は読んでても楽しくないなあ、というのがボクの個人的感想です。
何だろう。これは、女性主人公の立ち回る現代編は日本で何度も見る「山村美紗サスペンス」のノリですよ。
それはそれで嫌いではないんですが、「切れ味鋭い名探偵の推理と捜査過程」と「山村美紗サスペンス」を同時並行で読み進めさせられるのがどうなのか? ということかもしれません。やっぱり、なんか、ちょっと、女性主人公の言動にはイラっとします。殺されそうになったり襲われたり警察に疑われたりするあたりがいっそない方が個人的にはスッキリします。(そこがあるのがいいんじゃん、という意見の方が多いとは思う)
一作目・二作目と命を救ってくれた恋人男性は、ボクの頭の中では「神田正輝」になっちゃってるんですが、三作目ではのっけからあっさり別れて終わっててビックリします。続けて読んでるとそういうあたりも「それはないんじゃないの??('A`;)」と、思っちゃいますよね。少し前に読んでたクライマックスでのあのラブラブはどうなっちゃったんだよ、と。まあこのへんは英国ならフツーなのか、よく分かりませんけども、なんしか女性主人公に関しては悪い人ではないんだろうけど好きにはなれなかったなあ。面白いんだけどそういうあたりで感情移入に障壁があって、改めて一通り読み終わっても「大好き」にはなれないんですよ。「カササギ」シリーズは。
さすがにこれはもう続編は出ない終わり方だよね…と、思ったら、後書き読むとどうもホロヴィッツは続編の構想が既にあるそうです。2027年から書き始めるとか。さすが才能のある売れっ子は違うなあ。着想があっても書き始めるのが2年も先なんだな、と。
ともあれ新作が出たらまた買ってしまいそうですし、その頃にはまた「カササギ」から読み直してしまうかもしれません。「読ませる」面白さなのは間違いないんですよね(´・ω・`)